クーポン 大阪のこんな進化
約束事を履行しないのではなく、約束した当事者の実体がなくなってしまうのです。
なくなってしまったというその実、換骨奪胎して乙会社として生きているという技術です。
この不思議な分割方法が、商法ではなく、法人税法で明瞭に規定されています。
この分割を「合併類似分割型分割」(法57条2項、法令112条2項)と呼んでいます。
例によって、なんとも空想力を絞め殺すような言葉ですが、いわんとするところは、中身がまるまる別の会社になってしまうから合併に似ていますが、分割会社の法人格がなくなってしまうわけではないから合併ではないので、「合併類似」というほかありません。
合併ではないけれど、資産負債は分割会社の外部に移転して、その価値は新株にイヒ体してしまうから、まさに分割というほかはない会社分割だということでしょう。
法人税法上の適格分割型分割であって、①分割法人の主要な事業が、分割承継法人で引き続き営まれること②分割法人の資産および負債の全部が、分割承継法人に移転すること③分割法人がただちに解散することが、分割の日までに株主総会で決まっていること。
この3つの要件が充足するときは、分割承継法人は、分割会社の分割の日前5年以内に開始した事業年度において生じた未処理欠損金額を承継することが認められています。
ただし、適格分割といっても、分割法人はただちに解散することが要件ですから、税法上の分社型分割には事実上適用がないことになります。
人的分割の按分型しかないということでしょう。
また、吸収分割の形をとると、分割会社と吸収承継会社との間に特定資本関係(一方が他方の発行済み資本金の100分の50以上を直接または間接に保有する関係)がある場合には、両者間の共同事業性がかなり高いものでないかぎり、引き継げる未処理欠損金には制限があります(法57条3項、法令112条6項)。
吸収分割の多くは事実として特定資本関係がある場合が多いでしょうから、吸収分割の場合はよく検討してからにしたほうがいいでしょう。
この方法によるときは、もちろん、相手方が金銭債権をもつ債権者である場合には、公告・催告をすれば、当然、甲会社に対して、公告・催告をしなければ、乙会社に対して、債務の履行を請求してくることがありえます。
したがって、金銭債務以外の債務を逃げるためでないと、うまくはいかないでしょう。
非金銭債務でなくても、債務を逃げる場合には、新しく設立される法人の法人格を否認して、甲会社の債務をそのまま乙会社に背負わせる論理として、「法人格否認の法理」というものが広く認められています。
乙会社という法人を作っても、法人格の独自性を否定し、甲会社とみなしてしまう論理です。
特に労働法上の債務を逃げようとする場合には、これを逃げさせないためによく使われる論理です。
この「合併類似分割型分割」に「法人格否認の法理」の適用がありうるのか、かなり疑問です。
とにかく、受けないようにするためには、なにもうしる暗いことはないのですから、会社分割の方法を白昼公然とすることです。
つまり、公告も、知れたる債権者に対する催告もすることです。
法人税法規定の繰越未処理欠損金の引き継ぎ要件を厳重に守れば、資産は増減なしで、まるごと乙会社に承継されていきますから、銀行を含めた金銭債権者は催告されても異議はいわないでしょう。
非金銭債務であれば、弁済しろといわれても弁済しようもないし、供託したくてもできないし(厳密にはできる場合もありますが)、信託せよといわれても信託会社が受けないでしょう。
つまり、非金銭債務をオシマイにするときには有効に働くことがあるということです。
非金銭債務は、民法上も商法上も数かぎりなく存在しますが、金銭債務でもなく非金銭債務でもなく、そもそも法律上の債務とはいえないが、会社として重大な制約を受けている拘束から逃げるのにも、この方法は有効性を発揮するでしょう。
たとえば、前節で検討した株主間契約があります。
ベンチャー企業に投資する投資家たちは、株主間契約を多用します。
中小企業投資事業有限責任組合を牛耳る人たちは、株主間契約という手法を使わないかぎり、まず投資家を拘束する方法がないでしょう。
しかし、株主間契約はほとんどが会社を立ち上げる初期の段階での株主同士の約束ですから、会社が発展するにつれ、会社にとって邪魔になり、あとから加わった株主投資家にとってもそのような約束事はなくしてほしいということになりかねません。
このような場合にも、この手法は威力を発揮します。
この事例で、新会社が旧会社の商号と同じ商号を使用することができたとすれば、外からみた場合、なにも変わりがないようにみえます。
商号の続用は、営業継続の観点からみても望ましいはずです。
新会社が旧会社の商号を続用する場合のいちばんの問題点は、旧会社の債務を弁済する責任が発生する点です(次節でくわしく論じます)。
しかし、この会社分割方式では、実は新会社は旧会社の債務を全面的に引き継ぎますから、なんの問題もないのです。
安心して旧会社の商号を用いることができます。
この形の会社分割は、この意味でも優れた方法といえます。
新会社乙が旧会社甲の商号を使用することができるかという問題は、商業登記法上、とても楽しい問題です。
いろいろな方法があるからです。
そのうちでももっとも簡単な方法は、乙会社の本店を甲会社の本店所在地管轄登記所の管轄外に登記することです。
その場合も、乙会社の本店登記だけが別管轄登記所なのか、本店の実体も別登記所管内かという違いに応じて、いろいろと問題は出てきますが、もしできれば別の管轄登記所管内へ引越してしまいましよう。
この方式で分割しようとする会社の規模がかなり大きい場合などには、株主に対する権利行使催告のための公告に関連して、若干トラブルがあるかもしれません。
公告をみた株主も債権者(たとえば銀行)も、この会社がなんのために分割をしようとしているのか、外見上さっぱり理解できないからです。
旧会社と新会社の商号は同じ、事業内容は同じ、従業員も同じ、資産も負債も同じ、債権も債務もそのまま移転します。
そのうえ、多分、取締役、監査役まで同じでしょう。
わが身を鏡に映すようなことをなんのためにするのか、というわけです。
株主に対する権利行使催告公告は、会社分割を決議する株主総会の3カ月以上前にしなければなりません(商法224条の3)から、その時点では情報を受け取っていない株主にはまるでわけがわからないし、まして債権者はもっとわかりません。
銀行など大手の債権者には、あらかじめ上手に説明する必要があるということです。
ほかにも、この分割では不思議なことが起こります。
旧会社(分割会社)は解散しなければなりませんから、清算人を選任して清算手続きに入らなければなりません。
商法上、清算人は就任後、最初の義務として財産目録および貸借対照表を作成しなければなりません(商法419条1項)。
しかし、どのように作成したらいいのでしょうか。
資産も負債もなくなっているのです。
旧会社は減資をしたわけでもないし、する必要もありませんから、資本の額(168条の4)に異動はありません。
資本の額だけの貸借対照表など、どう作成したらいいのでしょうか。
吸収分割は、他社で実際に行われている営業を引き取るため、初めから自社で立ち上げる場合にくらべて時間を大幅に節約できる。
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